方々で絶賛されているので読んでみた。
結論としたは、私も絶賛する。が、その前にいろいろ前置き的話を。
この話のテーマは、AIと人間の関係という古いテーマ。そこに新しい観点から考察を加えており、その内容自体も評価に値するが、裏のテーマとはもう一つ、「フィクションの力」ということだろう。
私は山本氏の小説はほとんど読んだことがなく、主にトンデモ研究家としての彼しか知らない。そこにいる山本氏は、ゲームやコミックなど、フィクションがなにか事件が起きるとすぐ悪者にされてしまうことに反発してきた。この小説はそんなフィクションに不当な扱いをする世間に対する回答なのだ。この小説はAIのアイビスが主人公に7つの「フィクション」を語って聞かせるという構成になっている(読んでから奥付を見て知ったのだが、これらはすべてバラバラに発表された短編なのだ。それも驚き).アイビスは「これはフィクション」と宣言してしまい、しかし、語ることによりその力を、正しさを示す。特にそれが顕著なのが、1話めの「宇宙をぼくの手の上に」だ。この話はいきなり訳のわからない単語の羅列かは始まる。最初読者は「何これ」と引くのだが、徐々にその構造が見えてくるにつれて、感動を呼ぶ構造になっている。これは見事としか言いようがない。
さっき訳が分からないと言ったが、構成も語り口も非常に分かりやすく出来ている。山本氏はかつて(ジーン・ウルフのような?)分かりにくいSFを否定し、分かりやすいSFを持ち上げる本を出したことがある。そのような氏の姿勢をこの小説も如実に反映している。もう少しケレン味があってもいいくらいだ。
もうひとつ、山本氏といえば「オタク」だ。この小説にもオタク的ガジェットが多数登場する。しかし、一歩引いた目からオタクガジェットを扱うことで、一般の人にも受けいれやすい内容になっている。
(案外、これが氏のワナなのかも)。
いやー、いい本だった、今年の読書の中では最高点をあげてもいい。
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このページは、morotaが2008年6月17日 07:58に書いたブログ記事です。
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